『人文社会科学とコンピュータ:情報化社会におけるインターネット活用法』

杉田米行 (大坂外大) 編、横浜:成文社 (2001年5月)、ISBN 4-915730-30-1

第10章: 国際社会への扉:上級英語とネット上の遠隔教育

(当時) 香川短期大学教授 Steve McCarty
キーワード:サイバー社会、リテラシー、オンライン(ネット上の)教育、バーチャル学習環境

はじめに

第1節:サイバースペースで活躍するために日本人に求められていること

 第1項:国際社会に参加する目的と意志決定
 第2項:英語のリテラシーの再評価
 第3項:インタネットのリテラシー
 第4項:ネット上の上級レベルの英語力アップに関するおすすめサイト

  A.楽しみながら、英語のレベルアップ

   1.国内外のニュース・時事英語
   2.第二言語としての英語を自分で学習できるサイト
   3.英語によるネット上の交流

  B.自分の分野を英語で学習できる:人文社会科学の研究と連携
  C.ネット上で参加できる組織

第2節:ネット上の遠隔教育

 第1項:海外オンライン教育のリテラシー
 第2項:バーチャル学習環境の実践的利用法
 第3項:ネット上の遠隔教育に関するおすすめサイト

  A.海外遠隔教育についてのガイド
  B.参加できるネット上の教育に関する組織 
  C.バーチャル学習環境での実習
  D.ネット上のコース案内

   1.英語系のコース
   2.人文社会科学系のコース
   3.総合的なコース・データベース

おわりに


はじめに

日本人に求められていることは、国際社会に参加する目的と意志決定である。英語とインターネットの二つのリテラシー、そしてお勧めしたネット上のリンク集での体験を通じて、目的を達成するための方法を示す。ネット上(オンライン)で、国内外のあらゆる分野での遠隔教育の実践的利用法が見つけられるので、サイバー社会で読者自身の教育的目的が達成できる。

インターネットは人類にもう一つの新しい世界をもたらした。この世界は、測り知れない拡大の可能性を秘めている。サイバースペースに国境はなく、個人の望みと努力によって、その世界を限りなく拡大することができる。そしてそれを拡大することにより、新たなビジネスチャンスや深い知識を得ることができ、深いレベルでの国際交流も可能となる。

私は、そのサイバー社会のなかで様々な活動をしている日本在住のアメリカ人である。私にとってもインターネットは生活と意識の変革をもたらした。長年、距離が隔てていた社会との壁が崩れ落ち、世界とつながったという感じである。一度そのつながりをつくってしまえば、意識は拡大し、それに追随してネットワークも拡大していく。大切なのはこの世界につながっていくか、それをやめるかということである。しかし、21世紀を生きていく皆さんにとっては、嫌でも避けては通れない時期がやってくる。それならば早く決断をし、この世界のパイオニアを目指すのも悪くはない選択ではないだろうか?

国際サイバースペース社会への参加は、21世紀への希望であり意識の拡大である。同時に、国境や民族や性を超えた共生への可能性を秘めている。それは本当にお互いを知り、理解しあうしかないのである。そのためには、良識をもつ、より多くの人々の参加が不可欠である。既存の概念や習慣、情報だけで物事を判断するのではなく、自分自身で関わって、感じて考えて、もう一つの社会とつながっていっていただければ幸いである。

以下に、教育的機会を提供するサイバー社会の一部分を紹介し、皆さんがこの世界で活躍するために何が必要かを示していきたいと思う。

第1節:サイバースペースで活躍するために日本人に求められていること

サイバースペースで活躍するためには、乗り越えるべき課題がいくつかある。その世界を垣間見るという低いレベルから、実際に活躍するという高いレベルまで、段階は様々だが、高いレベルに到達するためにもっとも必要とされていることを二つあげたいと思う。一つ目は、国際社会のなかで自分が何を伝えていきたいか、そして何を吸収したいのかという目的意識をしっかりと持つことである。二つめは、目標を達成するための技術である、英語のリテラシーとインターネットのリテラシーの向上。これらについて以下に述べることとする。

第1項:国際社会に参加する目的と意思決定

日本人に今もっとも求められていることは、国際社会に参加することである。これは日本人に限ったことではないともいえる。外側から見れば、ひとつの地球共同体という一つの世界につながっていくということは、あらゆる人々に求められている。しかし、世界が国際化するなかで、先進国でも重要な役割をになっている経済大国日本の姿が明確に見えてこない。それは、日本人自身から発信されるメッセージが非常に少ないからである。サイバー社会のなかでも、積極的に参加している日本人は極めて少ない。ある程度の情報は受け取られていると思うが、それが返ってこないのである。コミュニケーションとは、双方向性があり、一方通行では成り立たない。ぜひとも皆さん人個人が情報の発信源になってもらいたい。

ここで、情報発信源になる。つまりサイバー社会に積極的に参加していく上で大切なことがある。それは伝えたいこと、表現したいことを明確にすること。そしてしっかりとした目的を持つことである。強い意思と目的を持って情報を発信していけば、それは何らかの形で人に影響を及ぼす。影響を受けた側は強い興味をそそられ、返事や質問が返ってくる。そして双方向のコミュニケーションが展開されていく。

現在の日本の教育制度にも問題があると思うが、日本の皆さんは、情報を受け取り、それを自分の中に蓄積していく学習方法には慣れている。しかし、その蓄積したものをうまく生かしていない。表現ができていないのである。日本人自身で自分たちのことを表現しないので、その実態がつかめず、海外の人々は、メディアや在日外国人などのフィルターを通して日本の情報を受け取ることになる。そういったフィルターを通すと、偏見が生まれる。人は、未知のものに対して好感よりも恐怖を抱きがちである。

しかし今、インターネットを通して個人のレベルで国際社会につながっていける機会が提供されているのである。それを利用しないのはあまりにももったいないことである。サイバー社会に参加している人々は、すべてが英語を母国語とする人々ではない。だから第二言語としての英語の使用者の英語の正しさがあまり問われていない。相手には、メッセージの意味が通じればよいのである。参加することに最大の意味がある。あなたがこの世界に参加することを決意し、目的を持って入ってみるとする。しかし、情報の海の中でどの方向に進んでよいか迷ってしまうことがあるだろう。そんな方々のために、この章の後半に、私が知っているおすすめサイトを掲載しておいたので、興味のあるところから訪問されてみてはいかがだろうか?興味のあるサイトを訪問し、同じ興味をもつ人々と関わっていくことにより、多様な見方や考え方に触れることができる。そのつながりを大切にし拡大していけば、国境を超えたビジネス、NPO、NGOなどの活動も可能である。

共に何かをしていける仲間を見つけることで、自分も活発に活動するやる気にもつながり、メッセージを伝える必要性も出てくる。そして一つのネットワークでの活動が確立されていくと、別のネットワークとのつながりもできてくる。もうそこまでくれば、あなたはサイバー社会で活発に活動する人となっているはずである。

しかし、この世界では自由であることとひきかえに、個人の自立心がとても重要である。そして粘り強くつづけていく根気も必要となるので、国内、海外を問わず、いっしょにやっていける仲間作りがなお望ましい。

第2項:英語のリテラシーの再評価

IT革命のおかげで、世界中の、 比較的教育水準の高い人々がサイバー社会で活発に交流できるようになった。本来の政府間交渉よりも、ネティズン同士の国際交流のほうが驚異的に多くなっている。

今まで国際社会の中で無口な日本人にとっては、これは新たなチャンスである。あなたが少しシャイであっても、実際に人と会って英会話をする代わりに、コンピュータという媒介がクッションの役割を果たしてくれる。

実際に聞いたり話したりするのではなく、読み書きのレベルで十分な交流が可能である。しかし、その読み書きを孤独に勉強するのではなく、実際に使われている生きた英語の読み書きなので、会話にもつなげていきやすい。読み書きの交流に自信がもてるようになったら、インターネット電話やネットミーティングを使って会話を楽しむ方法もある。この分野はこれからますます進歩し多様化してくると思われるのでだんだん使いやすくなるだろう。

ここでは、世界共通の低コストの電子メールやウェッブ(WWW)上のリソースを取り上げ、ML(メーリングリスト)やウェブサイトを数多く紹介する。溢れるリソースの中から、ネット上で仲間に入りやすく、人と出会いやすいサイバー組織につながるウェブサイトを選択してあるので、その中からあなたが自分の興味のある分野や英語のレベルによって選べる。

それぞれ紹介したリソースの名称(英語および日本語)とブラウザやメールのためのアドレス(URL)の上に簡単な説明を付け加えてあるので参考にされるとよい。その中に、英語それ自体を目的とする、外国語としての英語学習のリソースも紹介してある。しかし、大切なのは、自然な形で人と交流しやすく、自分自身が楽しめる場を選ぶことが望ましい。

その他、ここで紹介してあるものは、無料あるいは低コストで、アカデミックな水準を守る組織などである。誰でも参加でき、コストがかからないので、参加してみる価値はある。

第3項:インターネットのリテラシー

IT革命は、個人の考え方や生きがいの革命でもある。多くの人々がサイバー社会のネティズン(市民)になることが望ましい。現代は、学校を卒業しても生涯教育が必要となった時代であり、教育者の側も新しいIT技術の知識を必要とする。小学校にもパソコンが導入されているので、これから教育を受け社会に出ていく学生たちにとって、この新しい知識が不可欠である。

ここ数年のうちに日本でも爆発的な情報革命が起こると考えられるので、インターネットのリテラシーを向上させることは、英語を習得することと同様に目標を達成するための力強い道具となる。

インターネットは双方向性であるので、自分が行く側と相手に来てもらう側についてえてみよう。

まず、自分が行く場合。これは実際にあるウェッブページを検索したり、メーリングリストに入ったりという、情報を受け取る活動である。後半に紹介してあるウェッブサイトは比較的インテラクティブであり、自分の分野や興味のあるトピックにおける出会いの場となる。

現在でも多くの方々がML(メーリングリスト)を利用されていると思うが、その多くは、各自のホームページをもったり、ウェッブ上でアーカイブしているので、その情報を見ながら自分に適当なものを選んでみるとよい。MLは、ネット上で存在感があるように感覚される(Net presence)を作るのにも有効である。同じ分野の日本語、英語両方のMLに入り、日本語MLのほうで仲間作りをし、英語MLの方でも一緒にやっていくことができれば英語MLとのつながりも作っていける。MLには、規則的にポストすることで、ネット上の存在感が高まるので、自分にとって面白い内容などがあれば、積極的にポストしてみるとよい。

では次に、来てもらう場合。これは行く側より少し難しいかもしれないが、粘り強くチャレンジして頂きたい。

人に訪問してもらうためには、自分から情報発信しなければならない。これには21世紀の名刺ともいえるホームページの作成が効果的である。最近では比較的簡単に作成できるソフトも発売されているので手がけやすい。これに少しの HTML(コンピュータ言語)の知識があれば、なお良い。

作成したホームページに、自分の電子メールへのリンクを作ると、あなたのホームページに興味を持った人々からメッセージが送られてくる。あなたが英語のホームページを作れば、もちろん返ってくるメッセージもほとんどが英語だろう。あなたはそれに答えていく必要性に迫られる。その必要性は、あなたの技術の進歩を促進する。

第4項:ネット上の上級レベルの英語力アップに関するおすすめサイト
(Recommended Internet Sites for Improving Advanced Level English)

A.楽しみながら、英語のレベルアップ (Improving English with Enjoyment)

1.国内外のニュース・時事英語 (News - Abroad/Domestic)

BBC News - World
英国の放送協会の世界のニュースをはじめ、世界の各地、ニュースの種類やオーディオ・ビデオが選べる

News on Japan
日本に関するニュースはが色々なオンラインニュースのウエッブサイトから毎日選択されたリンク集となるので、お馴染みなニュースを英語で読む、あるいは、この便利なサイトを外国人の知りあいにすすめればよい。

2.第二言語としての英語を自分で学習する (ESL Self-Study)

Learning English - BBC World Service
英国の放送協会の第二言語学習者のためのサイト
Network (電子雑誌、難しい単語の定義、Real Player によるオーディオなど)
Email discussion group (英語学習者のためのML)

English as a Second Language
ウェッブ上で英語を学習するためのポータル(色々な英語のレベルと機能)

Dave's ESL Cafe
カリフォルニア州立大学の先生の総合的な第二言語としての英語のサイト 

The ESL Study Hall
ジョージ・ワーシントン大学の第二言語としての英語の学習者のためのリンク集(ネット上の「会話」、ディスカッションも含む)

Links of Interest to Students & Teachers of English as a Second Language
愛知工大の第二言語学習者・教師のためのリンク集(英語)

3.英語によるネット上の交流 (Meeting Others Online in English)

ePALS Classroom Exchange
カナダからの人数的に世界最大のキーパル(キーボードによるペンパル)を見つけるサイ
ト(個人でもクラス単位でもよい)

Intercultural E-Mail Classroom Connections
セイント・オラフ大学のテーマ別MLなどによる教師同士での国際的キーパルの紹介

World Without Borders
米国の綺麗なウェッブチャット環境の分野別コミュニティーとインタビューのようなイベ
ント(フリートーキングはThe Rainforest というチャットルームで)

Talk City Online Communities
米国の無料のウェッブサイト、メール、チャットによる話題別のサークルとイベント

B.自分の分野を英語で学習する:人文社会科学の研究と連携
(Studying One's Field in English: Humanities and Social Sciences Research and Collaboration)

Google Search Engine
最大のウェッブサイトのデータベースを検索することができ、Advanced Search, Preferences をまず選択したら、日本語ででも検索できる。
Google Web Directory
大きな分野別リンク集
遠隔教育の分野
社会の分野(言語、政治、経済、歴史、哲学などを含む)

All Academic: An academic search engine and index
米国オレゴン大学のアカデミックなジャーナル・論文集も含むリンク集とMLA、APA、Chicago Style の選択できる結果の検索機能

Social Science Information Gateway
英国の社会科学に関するアカデミックな分野別ディレクトリや検索機能

Voice of the Shuttle: Web Page for Humanities Research
米国カリフォルニア大学の分野別人文学リンク集

Keiko Schneider's Bookmarks
米国滞在のシュナイダー恵子氏の集めた日本語・日本についての大きなリンク集。例えば、海外の人が日本語によるコンピューティングについて尋ねられたら、このサイトをすすめればよい。

C.ネット上で参加できる組織 (Organizations to Participate in Online)

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 日本語 | 英語
Global Communications Platform (GLOCOM Platform). 今の日本に関するニュースやエッセイを提供する上に、日本のオピニオン・リーダーが、政治・経済・情報社会のテーマをオンライン上で英語のディベート行い、一般の人がコンピュータででも参加できる。

JALT Bilingualism SIG Home Page (英和のサイト)
全国語学教育学会バイリンガリズム研究部会のホームページ
『多言語多文化研究』ジャーナルの概要(英和)
「バイリンガリズムの理論と日本」((日本語、S. McCarty の書いた論文)

第2節:ネット上の遠隔教育 (Distance Education through the Internet)

第1項:海外オンライン教育のリテラシー

オンライン(ネット上の)教育は、21世紀の遠隔教育である。従来の遠隔教育は、主に通信教材(テキスト、CD-ROM、ビデオなど)を郵便でやりとりする方法が主流であった。また企業内イントラネットや、特別なソフトウェアを必要とするTV会議などの方法もあるが、ここではその種類のものは扱わない。低コストで未来性のあるオンライン教育に焦点をあて、その魅力と教育的機会を取り上げたい。日本国内でもこれからオンライン教育は拡大していくと予想されるが、海外の遠隔教育を活用することで、世界的コミュニティーの一員として有意義な活動ができる。それに加え、これから発展していくだろう日本国内のオンライン教育についても貴重な助言者となれる。

インターネットというとウェッブページ(WWW)をイメージする様に、世界共通のウェブは最もよく利用されている。ウェッブはワンパターンなものではなくメール、チャット、マルチメディア、パワーポイントのスライド、スクリプトなど多様な形で構成されている。これを見るためのブラウザの技術は効果的な教育道具といえる。ブラウザは無料で配布されているので誰でも簡単に入手できるし、既にパソコンにパッケージされていることが多い。また同時にReal Player、Quick Time、Windows Media Player、Flash などを活用すると学習がますます楽しくなる。

ウェブが教育に大変有効であることは、海外では広く認識されている。米国国会では、Web-Based Education Commissionという審議会もあるし、北米をはじめとする世界の大学では、大学の授業をホームページ上に公開したり、ウェブ上の電子メールのやりとりが普及している。最近ますますその利用頻度は高まり、ウェブに公開する内容も充実してきている。また、従来型の通信教育学部をオンライン化し、新しいバーチャル学部を開設している大学も多い。これによって世界規模での学生募集が可能となり大学の可能性が広がっている。大学だけでなく、中・高校や生涯学習の機関がバーチャル学校の開設をしたり、企業が社会人を対象とする corporate university を開設している。米国では規制が少なく、大学や企業、誰もがバーチャル学校を作ることができるので、その数は増加している。ここで注意しなければならないことは、海外遠隔教育を選択する上で、それを提供している団体の正式な認定の有無、評判の相違を区別し、その教育内容の質や卒業証明書の価値について判断しなければならないことだ。日本では学校を作る際に、認可を受けてから作るというイメージがあるが、米国の場合作ったあとで認可を受けるという逆のケースが多いので、資格取得を目的とする場合には注意が必要である。

これまでは学校について述べてきたが、学校だけでなく企業でも従来型の社内教育をWBT(Web-based Training)に移行している。また、社内イントラネットを強化し、会社同士(B2B=Business To Business)や客を対象としたサービス(B2C=Business to Customer)にはインターネットを活用している。従って社会全体のオンライン化が急速に進むことは必至であり、インターネットを使いこなす技術は、実社会の中でますます要求が高まっている。

実社会からの要求は、その人材を生み出す教育への要求でもある。海外遠隔教育を受けるということは、英語とインターネットの技術を同時に習得でき、社会の要求にも合致した実践的な方法である。

しかし、一方でIT革命が進む中、ディジタルディバイド(情報格差)の問題もとりあげられはじめた。情報を持つ者と持たない者に深刻な格差が広がる恐れがある。それは個人のレベルにとどまらず、教育にITを応用する社会としない社会の格差も生み出す。日本ではインフラ(ネット基盤)の問題はないので、その方向性さえしっかり持てば、改革は急速に広まる。しかし、これにもあなたがた一人一人の第一歩が不可欠である。従来からのトップダウンのやり方だけでなく、一人一人の声、つまりボトムアップの力を強化し、より理想的な社会作りを進めることが望ましい。そのためにも世界におかれている日本の位置を知り、国内だけでなく世界レベルでディジタルディバイドの克服について考えていく必要がある。海外遠隔教育は、それを考えていくためにも有益なヒントを与えてくれるだろう。 

第2項:バーチャル学習環境の実践的利用法

海外のサイバー社会は、日本と比較すると教育セクターの占める割合が高い。数多くの(ある程度あるいは完全にネット上で行われている)バーチャル学校、大学、企業の corporate university がある上に、バーチャル組織やネット上で行うアカデミックな学会もある。

バーチャル化が進むと、遠隔地でなかなか会えない人々との交流もできるようになり、幅広い人々との出会いやコミュニケーションが可能になる。しかし、教育環境を楽しく快適にするために教室や講堂のシミュレーション、効果的なコミュニケーションツール(メール、電子掲示板、テレカンファレンスソフトなど)が求められている。そこで、このコミュニケーションツールについて述べてみたいと思う。

コミュニケーションツールには大きく分けて、一つ一つのソフトウェアを組み立てて学習環境を作る方法と、総合的バーチャル学習環境を提供するソフトウェアを利用する方法がある。

一つ一つのソフトウェアを組み立てて学習環境を作る方法は、オンライン教育者が同期(IRC、Telnet、ウェッブチャットなど)と非同期(ウェブ上のコンテンツや電子掲示板など)のコミュニケーションの手段を多岐にわたって知ることが望ましい。Teach Online というオンライン教授法のコース: はその一例となるので参照されるとよい。

この方法は低コストあるいは無料で作ることが可能であり、NPOやNGOなどの比較的資金不足の団体や、その技術を試みる者たちが利用するケースが多い。

総合的バーチャル環境を提供するソフトウェアを利用する方法は、大学の遠隔教育などの組織的な学習を必要とするところでよく使用されている。WebCTやBlackBoardなどのソフトウェアが提供されており、同期、非同期のコミュニケーションツールが全体的にそろっているので利用者にとっては使いやすいものである。まず、「インターネットを利用した遠隔教育システムの現状と動向」 を閲覧して頂き、次に「WebCT: World Wide Webコースツールというウェッブサイトに提供されている論文や総合的学習環境の体験版を閲覧するとイメージしやすい。

総合的学習環境を作るソフトウェアの中では、低価格あるいは無料で提供されているものもあるが、使用OSが限定されているなどの制約に縛られることが多く、有料のものに比べると使いにくい。総合的学習環境を作るソフトウェアは全体的には揃っているが、その中で一つ一つのツールが一番使いやすいものを集めてある訳でもないので、同期通信によるチャットやホワイトボードなどは別の環境を使用したほうが便利な場合もある。ボランティア団体が無料で提供している Teacher Development Professional Institute は、教師がバーチャルオフィスを維持することのできるサービスである。

コミュニケーションツールにも多種多様な選択があり、これから開発が進めばもっと使いやすくなるだろう。しかし、実際に体験してみないとなかなか想像できない技術なので、おすすめサイトなどを参考にされて試して頂きたい。きっとそれで21世紀の遠隔教育のイメージが形づくられていくはずである。

さて次に、実際にネット上のコースに入学された場合についてである。最初に、電話やメールによる学習者サポートがあるはずである。学習者だけでなく、講師として関わる方には、ネットワーク管理者や、コース・デザイナー、コースウェアの業者のサポートも受けられるはずである。日本国内の遠隔教育では、サポートサービスがこれからの課題になるだろう。そのためにも、一歩先をリードしている海外遠隔教育で体験することは大変役立つものになる筈である。

次に入学してからの細かい注意点を2~3挙げてみると、あなたが自分で作る或いは与えられるユーザー名(User ID)とパスワードが数多くなる可能性があるので、そういった情報は、きちんとした形で保存しておくこと。利用するウェッブページの最初のところにブックマークをつけておくなどして、すぐ分かるようにしておくこと。授業料の納入は、クレジットカード番号をウェッブ上のフォームに記入する方法が通常になってきているが、信用できること、読み取られないことなどをしっかり確認しておく必要がある。ネット利用者が拡大すればするほど、残念ながらそれにまつわる犯罪も増加しているので注意を要する。

最後に説明しておきたいことは、ウェッブ上の総合的バーチャル学習環境の構成についてである。

バーチャル大学は、施設、カリキュラム、それぞれの講義シミュレーションなどで構成されている。学習者、講師、ネットワーク管理者などの構成員のインターフェイスはそれぞれ違う。例えば学生は、方法を読むだけで容易にその環境を使用できる。講師はあまりHTML言語が分からなくても、ウィザードを使用して、学習者が閲覧する内容を容易にボックスに入力したりペーストしたりできる。しかし、コースの主な書類はウェッブサイトとなるので、HTMLエディタなどを使用し、それぞれのウェッブページを作成し、バーチャル学習環境のウェッブサイトにアップロードするだけでよい。更に講師は独自に色々な設定を行うことができる。例えば普通はパスワードを入力しなければ入れない環境にゲストアクセス許可したり、講師以外の特定な助手 (T.A.) が学習環境を編集することの可否などの設定である。とにかく講師は様々な設定を自分で行う必要があるので、ネット上或いは学部内の訓練を受けることが望ましい。履修学生の電子的管理の仕方も勉強になるし、メール、電子掲示板、チャット、ウェッブサイト内外の教材などを、技術の側面だけでなく教育学的側面からもより良いものにすることを考えていかなければならない。講師の役割には多様性があるので、コース・デザイナーなどの新しい職種の人がその一部を引き受ける形もできてきている。努力すれば、サイバースペースのコツが、サイバースペースで学習できる。この新しい技術は、世界中の教育者も試行錯誤しながら共に同じ道を歩んでいるので、ネット上の情報の分かち合いは盛んに行われている。お互いをサポートし合うのはネット上の文化の特徴のひとつである。この仲間にあなたも入ってみてはいかがだろうか。 
 
第3項:ネット上の遠隔教育に関するおすすめサイト

A.海外遠隔教育についてのガイド (Guides to Distance Education Abroad)

Degree.net Central
米国 John Bear 博士の遠隔教育のガイド・警告

Virtual Universities of Australasia & the World
オーストラリアのアジア太平洋地域の生徒対象のバーチャル大学に関する情報や学位を売る「ディプロマ・ミル」についての警告 -- 具体的な質問を George Brown 氏宛の電子メール(英語)ででもどうぞ

Distance Education at a Glance
アイダホ大学の遠隔教育に関する総合的な紹介、リソース

Distance Education Clearinghouse
ウィスコンシン大学生涯学部の遠隔教育に関するニュース、研究のためのリンク集
Electronic Mailing Lists
遠隔教育などに関するML集

Distance Education Information, Tools, and Support Services
この米国のドットコムが遠隔教育の学習者、教師などの情報や毎日発信する電子メールによるニュースの登録などを無料で提供している

TeleCampus - International Initiatives
米国ヒューストン短大のネット上のオーディオ(口頭チャットなど)、ビデオ(MPEGとストリーミング)などのハイテクによる国際交流

WebEd
オハイオ・スーパーコンピューティング・センターが提供しているウェッブ作りのツール、リンク集、MLなど
WebEd Tools Comparison Chart
ウェッブ上のバーチャル学習環境の盛んなプラットフォーム・ソフトをいくつか比較するので、その構成や水準が明らかになる

Node Learning Technologies Network
カナダの大学レベルの教育技術ニュース、、国際的学会のお知らせ、無料の電子メールによるニュースレター

Online-Ed
オーストラリアのオンライン教育に関する出版物や電子メールによるニュースレター

The Distance Ed. for WebHeads Homepage
カナダにいる Emir Mohammed 氏の遠隔教育学習者ガイド

Learn for Life
カナダの生涯学習・ホームスクーリングに関するサイト:無料のe-mail、掲示板、チャット、ソフトのデモ、無料のネット上のコース案内など

「北米大学の遠隔教育との連携」
九州工業大学の情報処理教育研究集会で発表した S. McCarty の書いた論文(日本語)

B.参加できるネット上の教育に関する組織 (Participating in Online Education Organizations)

DEOS-L - The Distance Education Online Symposium
ペンシルバニア州立大学のメッシージの多いメーリングリスト listserv@lists.psu.edu  へ subscribe deos-l [英字による自分の名前] という電子メールのメッセージを送信し、返事が来たら、set deos-l mail digest というメッセージをまた送信したら、一日一回のみ、前日の全てが一つの長いメッセージで受信される。あるいは、以下のウェッブ上のアーカイブで読んだり、ブークマークを付けたりすることもできる

World Association for Online Education (世界オンライン教育学会)英語 | 日本語
モットーは、「楽しい文化交流とオンライン学習のために」。米国認定のバーチャル非営利団体 (NPO)。2000年度のネット上で行った総会で、会費を廃止することが決定した。 

Global University System (グローバル大学機構)
リーダーは、ニューヨークにいる内海武士博士(1994年ペリー卿賞受賞「遠隔教育分野での最優秀貢献賞」)。バーチャル大学よりも、UNESCO認定の非政府組織(NGO)であり、世界銀行 (World Bank) 等の支援を集め、教育や医療への平等なアクセスを衛星によるインターネットなどで世界各地でパイロット・プロジェクトをすすめる組織である。日本がアジア太平洋地域のセンターになるために、ボランティアが求められている。グローバル大学機構の概要(和訳)| Global University System Asia-Pacific Framework (グローバル大学アジア太平洋機構)| 米国のウェブサイト

Online Educator Development Practicum(英語)
ネット上の教育者になりたい方でも、この代表的な英語による総合的バーチャル学習環境を無料で体験するには、まず以下のURL(アドレス)を閲覧すればよい。Students enter here にクリックし、次のページの First Time Users の下の Enter your access code here: の右でちょうど M78RYA というコードを入力し、ENTERにクリックする。次のページの簡単なウェブ・フォームを記入し、今度利用する時から、同じ自分で選んだUser Name と Password で、MetaCollege で Registered Users で直接にログインできる。ウェブ・フォームが完成したら、Register でクリックし、次に作られた自分のパーソナル・ページで多様なことができる。世界オンライン教育学会のWAOE Online Educator Development Practicum にクリックしたら、実習のコース・ホームページが閲覧できる。コースの四カ国のインストラクターと助手達(TA)のメールへのリンクなどがある。そこから、上にある Things to remember や左側で書いてあるそれぞれの機能を体験してみればよい:特にコースの情報の Syllabus と Assignments、コース・ツールの Bulletin Board (掲示板)Chatroom (ドローできるホワイトボード付のチャット・ルーム)、やコース・リソースの Course Material (日本語・英語)と Online Links(参加者達が加えているリンク集)を体験すればよい。(インストラクターは、S. McCarty です)。 

C.バーチャル学習環境での実習 (Experiencing Virtual Learning Environments)

WebCT - World Wide Web コースツール | 北米の WebCT.com(英語)
この日本語版WebCTの計画のウェブサイトで、研究者がバーチャル大学などで使われる総合的バーチャル学習環境を学んだり、無料で体験したりできる。名古屋大学の梶田先生達のおかげで、未来の通信制大学が見えてくる。

樋川研究室バーチャル教育システム
最近のブラウザのみでマルチメディアが体験できるインターネットを利用した遠隔教育システムの現状と動向
遠隔教育に関するウェッブ上のパワー・ポイント・プレゼンテーション

Open Online - Tour
カナダのゲルフ大学のオンライン科目(栄養学)ー(パスワード不要であるから、すぐツアーが見える)

Government Studies WebCT Tour
カナダのアルバータ大学のオンライン科目のデモ ー Create Account にクリックし、ユーザ名、パスワードを設定したら、色々な機能が体験できる。

QuickTeam
このような米国にあるバーチャル団体環境で、地理的に離れている会社や学会のメンバーが色々な計画、会議を無料で行える。

D.ネット上のコース案内 (Online Course Catalogues)

1.英語系のコース (English-Related Courses)

The Distance Learning Center (ディスタンス・ラーニング・センター、日本語・英語)いくつかの海外の大学を国内で代表し、日本人がよく入学する遠隔教育のコースを有料で提供している

NetLearn Languages
英国ロンドンの有料のコンピュータによるレアルタイムの英語などのレッスン NetLearn Languages についての記事、Real Player によるオーディオ、ビデオ(BBCでの Net Meeting によるレッスンのデモを含む)

English Online, Languages Online, the Independent Traveler
米国の英語(オーディオも)、その他の外国語、旅行と遠隔地教育に関するリンク集

2.人文社会科学系のコース (Humanities and Social Science-Related Courses)

Fathom
コロンビア大などの米英大学・博物館・図書館連合の人文社会科学の割合多いバーチャル大学。First time user? にクリックし、Learn about online courses というスライドによるデモなどが見える。

Institutions and Courses Database: Arts, humanities and social sciences
人文社会科学の遠隔コースとその提供している大学などのデータベース The Open University(英国の開放大学)国際遠隔教育センター

European SchoolNet
ヨーロッパ 連合(EU) の文化的ネット上の計画
Virtual School
そのバーチャル学校

3.総合的なコース・データベース (Overall Catalogues of Online Courses)

Free Education on the Internet
米国の無料のネット上の講座の分野別カタログ(人文学、社会科学、第二言語としての英語も含む)

Peterson's - Distance Learning - Program Search
米国の遠隔教育に得意な出版社の大きなコース・データベース・サーチ

International Centre for Distance Learning
The Open University(英国の開放大学)国際遠隔教育センター

Learners - TeleCampus
カナダの遠隔教育のデータベース、アドバイス、社交的ラウンジなど
世界的な大学などの有料と無料の分野別カタログ (英語)

Find your Online Accredited Graduate School
ネット上の認定されている大学院のコース案内

World Lecture Hall
テキサス大学にある世界的ウェッブ上のコース・カタログ

Globewide Network Academy
遠隔コースを見つけるための検索できる大きいデータベース(ちょっと使いにくい英語によるサイト)

Learning over the Internet
北カロライナ大学のバーチャル大学・コースなどのディレクトリー

おわりに

上記のようなリンク集は、日本語のものもあるが、実際に国際サイバー社会に参加するために、英語のサイトを閲覧し、そこに参加している人々と交流を始める入り口の扉を開けるのが目的である。あなたができること、現在使える道具をフルに活用し、国際社会に向けて情報発信して頂ければ幸いである。できないことに注目するのではなく、できることを数え上げれば限りなくあるはずである。失敗を恐れず、自信を持って進んでいけば、それはあなたの視野を拡大し、新しい何かを発見するきっかけを作るかもしれない。多くの人々がまだ試行錯誤をしながら進んでいる道なので、世界の人々と協調し、国や民族の壁を乗り越え、共に良い社会作りを目指して行ければ喜ばしく思う。


Updated on 22 October 2016 | Steve McCarty's publications | 著作リンク集